分譲住宅(建て売り)とはどのような性質を持った建物なのかご存じでしょうか?もちろん一般ユーザーの方は知らない事と思います。実際に家を建てた後に販売するのです。
つまり分譲住宅は注文住宅とは違いまだお客様が付いていない状態で家を建てるので、もし売れなかったら大変なことは、容易に想像できるかも知れません。
管理人は注文住宅メインで設計していますが、年に数棟は分譲住宅の設計もしています。ハウスメーカーの分譲住宅を建てる事情にも精通しています。
ここでは分譲住宅のもつ性格を伝えつつ、どのような分譲住宅であれば「買い」かをお伝えします。商売をする上でのハウスメーカーのもつ事情を考えると分譲住宅がどのような考え方で作られているかが手に取るように分かってします。
分譲住宅はハウスメーカーが実寸大のモデルを土地に建て、売りに出している住宅のことを指しています。反対に注文住宅とはお客様と一から打ち合わせをしながらご希望に添った住宅を計画し、建築される住宅の事です。
不動産業界の世界では建築して一年たってしまうと広告では新築扱いとする事が出来ず、未使用中古住宅とし売り出さなければいけないのです。
新築と違う扱いになってしまうので一気に価格を落とす必要があったり、何かのサービスとくっつけてタタキ売りをする必要が出たりと、売れ残るとメーカーとしても良いことは何一つありません。固定資産税ばかり取られ、さらに安く売却しないといけないのです。下手をすると利益が殆ど残らない場合も・・・。
その為遅くとも一年以内に販売する必要があるのです。何気なく販売されている分譲住宅にはこのような事情を内在しています。建築済みの建物ですので、工事代金は先に業者に支払っているます。売れなければ本当の意味で負の財産になってしまうです。
分譲住宅はハウスメーカーの事情から2種類のタイプがあります。それはモデルルーム代わりの目的で建てるタイプと即座に売却目的で建てるタイプです。
その違いはなんでしょうか?言葉の通りですが、モデルルーム代わりの場合は特に早く客を付けて売ろうとしていません。高い価格で売れたらラッキー位の感覚で建てています。
あくまで「実物大のモデルルーム(展示場)」なのです。ですので一年以上売れなくてもOKなのです。メーカーが売りたい特定の商品の実物大があればお客さんに説明もしやすいですし、その良さが伝わり安いのです。
その為そのモデルルームの案内がきっかけで、契約が取れればOKというのがメーカー側の戦略です。良いと思わせなければいけないので基本的によく見えるように設計されてる場合が殆どです。
つまり標準品だけで無く、オプションもかなり使い見栄えがするように計画されているはずです。その建築に携わる担当者も基本的には経験を積んだ、社内的には実力派が担当する事が多いのも事実です。
もう一つが、本当に売り上げを上げる目的で建築する分譲住宅です。こちらはあまり見栄えを重視して金額が上がりすぎても売れませんし、あまり凝った間取りにするとそれをよしとする人が見つからなければ売れないのでとにかく「売れる建て売り」を目指しています。
その結果どのような建物が出来るかというと、ある程度こだわりポイントを絞った万人受けしそうな設定の住宅、周辺の分譲住宅と比較されても高すぎない価格設定の建物ができあがります。
ここがとても難しい所なのですが、あまり万人受けしそうな建物を考えると逆に誰にも受け入れてもらえない建物にもなりかねないのである程度メーカーなりのこだわりポイントを盛り込んでいるはずです。
少し話がそれますが、個人的にはこの分譲住宅が下手なメーカーは注文住宅をさせても、大した提案が出来ないのではないかと思っています。本気で考えた分譲住宅が「一般ユーザーから見て普通」ではやはりイマイチですよね。
分譲住宅と注文住宅を比較すると、一見して注文住宅の方が自分たちに合った家作りができるので良いと思われがちですが、それは「自分たちの希望が言える」と言った側面しか見えていないからです。
上記で説明していますが、分譲は基本的には売れなければいけないのでプロが本気で考えて計画しているのです。見えないお客様の要望を想像し、暮らしやすさ、デザイン、価格等を非常によく考えているのです。
つまりたとえ自分たちの希望が言えなくても、プロがすでに様々な提案をしてくれている形がそこにあるのです。その中には自分たちの要望には無かったけれども「これは良い」と言う項目があるはずです。
それが実物大、目に見える形としてあるので良い、悪いがハッキリします。注文住宅と最も違う点はこの「思っていたのと違う」という事が何一つない点ですね。
注文住宅は図面上やサンプルで確認は出来ても、最終的にはできあがらなければどんな建物が建つか分からないのです。
分譲住宅の最大のメリットは実はプロが本気で考えて計画しているので暮らしやすい設計になっている点です。また思っていたのと違うという事態にならず、コストもハッキリとしている事もメリットといえます。
分譲住宅は何故存在してるかが分かれば、もしかしたらためらい無く契約する事が出来るかも知れませんね。この建て売りは以下の二種類のタイプがあることを知っておきましょう。
モデルルームタイプは見栄えや、案内のしやすさ、商談のしやすさを重視しているので基本的にオプションを多く取り込んだ良い仕様の家になっている。予算も周りの建て売りと比較すると高めの設定されている。
即時販売するタイプはある程度万人うけするように計画されており、価格帯も平均的なゾーンで抑えてある。
最大のメリットはどちらのタイプもプロが最終的に売れるよう、本気で考えているので暮らしやすい設計がされている。
もし分譲住宅で築一年間近、または一年を超えており、非常に仕様が良く、価格帯が高い建て売りがあればチャンスです。一年でモデルルームタイプの分譲住宅は役目を終え売却される方向へシフトされるので、大幅な値引きをして売ってもらえるタイミングです。まさにこれが一番「買い」の分譲住宅で間違いありません。
是非新しい目線で各ハウスメーカーの「建て売り」を見てみましょう。これまでと違った切り口で見ることが出来るはずです。